B8900

入浴時間

  

浴槽の中で向き合って座る。
兄さんに抱き着き、何度もくちづける。


「ジョン、少し離れて…」

「ん~もっと」

「髪が洗えないよ」

兄さんがクスクス笑う。







疲れる航海だった。
重い身体をふらふらと引きずり、自宅の扉を開ける。
ソファに転がりこむ。着替えるのも億劫だ。
そのまま、泥のように眠ってしまい ──────




「……ジョン」

優しい声。


愛しい兄さんが、そこにいる。
ずっと、ずっと会いたかった。
夏の海のように、きらめく青い瞳 ───


ガバリと跳ね起き兄さんの首筋にしがみつく。

「おわ、ジョン!?」

唇を重ね、無理やりこじ開けて貪るように舌を絡める。

「んっ …ちゅう……っ、兄さん、っ、会いたかった!兄さん、にいさ……むっ !!」

両手で頬を挟まれ、めっ!と制止される。

「ジョン、少し待っ…」

突然、腹がグゥ~と盛大に音を立てる。
……帰ってから何も食べていない。


兄さんが笑う。

「とりあえず食事と……その前にシャワーかな?」

崩れた前髪を、白く長い指がそっと梳いてくれる。







「目を閉じて」

シャワーの湯が髪に注がれる。

「熱くないか?」

「ん、大丈夫」

毛先から始まり、後頭部からこめかみ、額の生え際まで満遍なく湯をかけられる。
兄さんの指が絡まった髪を優しくほぐしてくれる。
肌にじっくり染み込むような温かさに、ほぅ…と溜息が漏れる。



泡立てたシャンプーで髪を覆われる。
兄さんの髪と同じ、爽やかなハーブの香りがふわりと広がる。


素早く動く指が、かしゃかしゃと髪をかき分ける。
地肌は指の腹で柔らかく擦られる。
うなじから登って耳の後ろ、頭頂部へ。
小刻みに揺らされ、凝り固まったところをぐっと押されて解される。
緩急をつけた絶妙な力加減がたまらない。


「痛くないか?痒いところは?」

「ん~…耳の後ろ…ちょっとかゆい…」

「ここかな?」

むず痒かったところを指先でこりこりと掻いてくれる。

「あ~~…いい……」

身体から力が抜け落ちる。

「蕩けきっているなぁ」

兄さんが優しく笑う。


温かいシャワーで髪の泡を流される。

「さぁ、もういいよ」

ゆっくりと目を開ける。

慈愛に満ちた青い瞳。
なんて綺麗なんだろう ──────



うっとり見惚れていると、腕を軽く持ち上げられる。
指先にキスしてくれる。

「次は身体を洗うよ。リラックスして」



泡立てたボディタオルで隅々まで洗ってくれる。
指の一本一本まで。少しずつ、丁寧に。
フワフワと肌をたどる優しい感触に、内側から熱がこみ上げる。

甘やかで、少し……くすぐったい。

気持ちいい ──────







泡を流した後、柔らかいバスタオルでポン、ポンと水気を拭われる。
ドライヤーで髪を乾かしてくれる。

「いかがでしたか?」

「もう最っ高だよ…!」

至れり尽くせりだ。

「こんなにしてもらって良いのかなぁ?」

「ご褒美だよ。航海お疲れ様」

兄さんが微笑む。


優しく髪を撫で、キスしてくれる。
安心感に包まれ満たされて、意識がとろりと溶けていく ─── 。




軽く腹ごしらえをして、
それから


一晩中、ずっと愛し合っていた。

2025.12