入浴時間
浴槽の中で向き合って座る。
兄さんに抱き着き、何度もくちづける。
「ジョン、少し離れて…」
「ん~もっと」
「髪が洗えないよ」
兄さんがクスクス笑う。
疲れる航海だった。
重い身体をふらふらと引きずり、自宅の扉を開ける。
ソファに転がりこむ。着替えるのも億劫だ。
そのまま、泥のように眠ってしまい ──────
「……ジョン」
優しい声。
愛しい兄さんが、そこにいる。
ずっと、ずっと会いたかった。
夏の海のように、きらめく青い瞳 ───
ガバリと跳ね起き兄さんの首筋にしがみつく。
「おわ、ジョン!?」
唇を重ね、無理やりこじ開けて貪るように舌を絡める。
「んっ …ちゅう……っ、兄さん、っ、会いたかった!兄さん、にいさ……むっ !!」
両手で頬を挟まれ、めっ!と制止される。
「ジョン、少し待っ…」
突然、腹がグゥ~と盛大に音を立てる。
……帰ってから何も食べていない。
兄さんが笑う。
「とりあえず食事と……その前にシャワーかな?」
崩れた前髪を、白く長い指がそっと梳いてくれる。
「目を閉じて」
シャワーの湯が髪に注がれる。
「熱くないか?」
「ん、大丈夫」
毛先から始まり、後頭部からこめかみ、額の生え際まで満遍なく湯をかけられる。
兄さんの指が絡まった髪を優しくほぐしてくれる。
肌にじっくり染み込むような温かさに、ほぅ…と溜息が漏れる。
泡立てたシャンプーで髪を覆われる。
兄さんの髪と同じ、爽やかなハーブの香りがふわりと広がる。
素早く動く指が、かしゃかしゃと髪をかき分ける。
地肌は指の腹で柔らかく擦られる。
うなじから登って耳の後ろ、頭頂部へ。
小刻みに揺らされ、凝り固まったところをぐっと押されて解される。
緩急をつけた絶妙な力加減がたまらない。
「痛くないか?痒いところは?」
「ん~…耳の後ろ…ちょっとかゆい…」
「ここかな?」
むず痒かったところを指先でこりこりと掻いてくれる。
「あ~~…いい……」
身体から力が抜け落ちる。
「蕩けきっているなぁ」
兄さんが優しく笑う。
温かいシャワーで髪の泡を流される。
「さぁ、もういいよ」
ゆっくりと目を開ける。
慈愛に満ちた青い瞳。
なんて綺麗なんだろう ──────
うっとり見惚れていると、腕を軽く持ち上げられる。
指先にキスしてくれる。
「次は身体を洗うよ。リラックスして」
泡立てたボディタオルで隅々まで洗ってくれる。
指の一本一本まで。少しずつ、丁寧に。
フワフワと肌をたどる優しい感触に、内側から熱がこみ上げる。
甘やかで、少し……くすぐったい。
気持ちいい ──────
泡を流した後、柔らかいバスタオルでポン、ポンと水気を拭われる。
ドライヤーで髪を乾かしてくれる。
「いかがでしたか?」
「もう最っ高だよ…!」
至れり尽くせりだ。
「こんなにしてもらって良いのかなぁ?」
「ご褒美だよ。航海お疲れ様」
兄さんが微笑む。
優しく髪を撫で、キスしてくれる。
安心感に包まれ満たされて、意識がとろりと溶けていく ─── 。
軽く腹ごしらえをして、
それから
一晩中、ずっと愛し合っていた。
2025.12