B8900

雨の日

  

外は雨。
明日は兄さんが帰ってくる。


ベッドでノーマンのシャツを抱きしめる。
クローゼットから失敬したものだ。

「……ぁ…兄さん」

下着を下ろす。兄のシャツに顔を埋めて。
日向の匂いと、ほのかに兄の香りが混じる。
雨のあとみたいな、少し甘い──

「ノーマン……」

熱を持った自身に手を伸ばす。



あんな映画を見たからだ。
興味なかったのに、叔母たちに連れて行かれた恋愛もの。
ヒーローは少し兄に似ていた。
太陽のような金色の髪、瞳は青い海の色。



忙しく手を動かす。

「兄さん……」

映画のヒーローは、燃えるような瞳でヒロインを見つめる。
兄に似た青い瞳で。

「ふ、あっ……」

抱きしめて、優しく愛を囁いて、キスをして──


映画の中の瞳が、愛しい兄の瞳にかわる。
瞳は青い海の色。
太陽みたいな金色の髪。

─── ジョン

兄の優しい声を想う。

「兄さん……」

俺を見て。
あの映画みたいに。

「兄さ……ん、く…はぁ」

抱きしめて。

「にい、さ…アッ、ん、好き」

愛してると言って。

「好き、にい…さ…ん、好き、すき、あっ」

─── ジョン、愛してる

シャツの香りを深く吸い込む。
日向の匂いと、少し甘い、大好きな兄の────────

「ン、あ、あぁッ!」

腰が痺れて、爆ぜる。
背骨がとろける。
熱い。





息を整えながら、兄のシャツを見る。
クローゼットに戻す訳にはいかない。

「……ごめん」

胸がズキズキ痛む。


兄さんは何も知らない。
俺がしてること。
兄さんで抜いてること。
自分の想いに気づいてから、何度も何度も繰り返し。


外は雨。

「ごめん」

俺は良い弟になれない。俺は……兄さんに愛されたい。
あの映画のヒロインみたいに。
青く、燃えるような瞳で見つめられて。
抱きしめられて、愛を囁かれて、キスされて。

「……ぁ、ふ」

再び熱を持った自身に手を伸ばす。

「兄さん……」

兄のシャツから少し甘い香りが漂う。
雨のあとみたいな────────


外は雨。
明日は兄さんが帰って来る。

2021.9